立体的な対象物を平面的な映像に変換することが投影です。壁に貼った平面図形を写真に撮ることもありますから、変換の対象に平面図形も含めます。この操作を理解する最も簡単な連想は、カメラを考えることです。カメラは、中心投影の原理で3次元の図形を2次元の図形に変換する装置です。現在最もよく使われるカメラは、35mm幅の穴明きロールフィルムを使うものです。35mmカメラには種々の交換レンズが使われます。これらのレンズの図学的な定数を表2.2に示します。
表2.2 35mmフィルムを使うカメラのレンズ定数
レンズ |
焦点距離 |
視角 |
画面幅/焦点距離 |
|
18 |
100 |
1.983 |
標準 |
50 |
47 |
0.724 |
|
85 |
29 |
0.430 |
35mmカメラが撮影する映像は、標準として、25mm×38mm(2:3の比)の枠に投影されます。光学的にはレンズの丸い視野にこの枠が接するので、対角線の長さ45mmが視野円の直径です。レンズの焦点距離を高さとする円錐の頂角が視角です(図2.2)。人の眼の視角とほぼ同じ視野の映像が得られるものを標準レンズといいます。35mmカメラの場合、その焦点距離は50mmです。広角・望遠などの区別は、この標準レンズに対して焦点距離の大小でいう習慣になっています。
フィルムに撮影された映像は任意の大きさに引き伸ばすことができます。そのため、理論的な扱いを便利にするため、仮想のカメラの焦点距離を単位長さf=1とし、映像の写る投影面が仮想フィルム面であると考えます。実際のカメラは、この仮想のフィルムを焦点距離fで拡大した寸法のネガが得られるとします。レンズの標準・広角・望遠の区別は、この仮想フィルム面の有効範囲の大小で区別することにします。これが投影面上のウインドウ定義です。つまり、普通のカメラはフィルムの枠が一定で、焦点距離の違うレンズを交換するのに対して、仮想のカメラは焦点距離が1に固定され、フィルムの寸法(ウインドウ)の方を変化させます。ウインドウの寸法は、横幅の方TH2を一つのパラメータとして選ぶことにして、縦の寸法はディスプレイ装置やビューポートのアスペクト比(縦横比)で合わせることにします。
被写体を遠くから眺め、相対的にレンズでの拡大率を大きくすると、平行投影が得られます。また平面的な図形をカメラで撮影するときは、図形の面とフィルム面とを平行にすることで、任意の倍率で図形を拡大縮小することができます。図学で考える平行投影では、対象物の原寸そのままを投影するような1:1の倍率の投影面を考えますが、そうすると、仮想フィルムの寸法が対象物の全体寸法と同じくらいの大きさになってしまいます。平行投影を撮影する仮想のカメラは、この実物大の投影面を間接的に撮影すると考えます。そのため、レンズの視野に取り込む実寸投影面の方の寸法を決め、これをウインドウの寸法とします。この場合の実践的なカメラの位置決めは、レンズの種類に応じて実寸投影面がカメラのファインダーに納まるように、レンズの光軸に沿ってカメラを前後させますので、仮想のカメラの位置は光軸上のどこに在っても構いません
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