2.11 標準化装置座標系

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 プリンタ、プロッタ、ディスプレイなど、作図原理の異なる種々の装置があって、装置を切り替えても相似な作図が得られるようにするには、作図命令を規格化しておく必要があります。JIS X 4201 GKS (Graphical Kernel System)で示した標準化装置座標系はこの考えに基づくもので、ユーザの立場を考えたものです。作図装置を動かす実際の座標系を装置座標系といいます。工業製図などでは、図形を指定した寸法で作図する必要がありますので、装置座標系の精度は重要な数値です。精度は、メートルを基準とする場合(例えば0.1mm)とインチ寸法に基づく場合(例えば600DPI)とがあって混乱します。この混乱を避けるのが標準化装置座標系(NDC: Normalized Device Coordinates)であって、ユーザは装置座標系のことを知らなくてもよいようにしようというものです。これは、画面のx、y軸の座標範囲を[0,1]、[0,1]の正方形とし、左下を原点とした実数座標です。作画装置は正方形ではないことが多いので、実際の作画範囲を、左詰め、または下詰めとして、この正方形に最大に接するように割り付けます。

 このGKSに基づけば、いつも同質の作図が得られると保証するものではありません。現実には次のような問題があります。まず、写真フィルムの画像処理では、座標原点をレンズ光軸に相当するフィルムの中心に設定する方が便利です。どのような種類の作図装置に出力しても、作図領域の中央にこの座標原点がくるようにしたいとなると、標準化された装置座標系にデータを引き渡す際に、原点の位置を調整する必要があります。つまり、矩形で得られたフィルムを、別の矩形領域にいっぱいに接するようにさせるための座標変換が必要になります。この問題は、後で述べるビューポートに画像を貼り付ける際にも生じ、この変換をウインドウ・ビューポート変換と呼びます。

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