
科学技術関係の数値計算をするとき、計算機械が使えなかった環境では、桁数の多い数値の乗除計算は大変でした。その一つの方法は、常用対数表を使って実数を対数に直し、その加減算を算盤で行い、再び対数表を逆に使って結果を数に直します。しかし、一寸した技術計算で、精度の扱いに神経質でなければ、計算尺を乗除計算に使いました。sine, cosineなどの基本的な数学関数の値を参照するには数表が必須でした。地形測量の計算では、sine, cosineの値を、更に常用対数化した分厚い数表を使いました。コンピュータが利用できなかった時代、技術者が使う数値計算の三種の神器は、「算盤・計算尺・数表」でした。今では、これが関数電卓に置き換わり、さらにパソコンの利用へと変化してきたのです。常用対数表を始め、種々の基本関数の数表が不用になりましたし、高校の数学教育でも対数を使う実用的な数値計算の問題を殆ど見なくなりました。