野にあれば野を楽しむ−。しかし漫然と出かけてもそれは得られない。得るには、それなりの資格、技術、主体的条件がいる。同じことが衣食、住、生活の様々な場面でもいえる。すみずみまで明るくなった暮らしの中、服装も街も原色にあふれ、風土に見合うことよりも時代に感覚をシンクロさせるものが一般的な今、私たちは自然が発する情報を受信する力が弱まっていることを実感する。のみならず先人の残した知恵や技術に対しても反応が薄くなっている。釣りブームといって訪れる人々が増えているのは、実はかつて川に学び、鋭敏だった自然との交信力を取り戻そうとしているためかも知れない。