秩父デザインリソース政策研究に関する定例会(10月定例研究会)

平成9年10月23日

講師 札幌市立高等専門学校 助教授 宮内 博実氏

・定点観測について

定点観測の中に色の変わらない「家」を入れて周りの変化と対比させ、また植物や水を入れて撮影して いるため季節変化をわかりやすくしている。特に、近景・中景・遠景を撮ったものは影のでき方や植物 の成長から、季節変化が非常によくわかるものになっている。この定点観測の写真はこれまで春夏秋冬 を撮っているものは存在していたが、月ごとに撮影されたものは今までなかったので、貴重な資料とな る。写真撮影が10月で終了したので、今後は分析作業を行っていくが、イメージから分析を行うこと になる。特に変化が顕著に現れている地区を1・2点に絞って大きくのばし、SD法を使って「秩父に 住んでいる人」と「秩父を知らない人」(具体的には、札幌市立高等専門学校の学生)が定点観測の写 真の変化を見て、秩父のイメージがどのようなものであるか調査し、全体の印象を把握する。その後、 写真では小さくて見えないものについて、各班ごとに「川の色」「水」「土」「木の茂りかた」等、変 化するものと変化しないものを地域ごとに単語でまとめ、コメントを入れていく。
10月から2月にかけての写真を見ると、この季節の写真は緊張感があり、いい景色をしている。

・定点観測以外の写真について

テーマごとによる写真の9枚構成を早く仕上げなければならない。現在、色出ししたものをアソート チェックしているが、全体の約30%しか利用できない状態である。今後は、9枚構成をつくっていく が、色出しした写真の重複をなるべく減らし、12月には構成したもの全てを見られるようにする。
定点観測とディテールとの間をつなぐ、札所の写真と札所巡り風景の写真がない。秩父地域を動いて いくことによって秩父全体を知ることができる札所巡りは大変重要であるので、今後はこれらの写真を 撮るようにする。札所の重要性は、特にそのロケーションに現れている。札所は高い所と低い所の中間 に位置し、札所では「秩父はどこからも山は見えるが、毎月山の景色が違う。」「季節によって光の射 し具合が違うので、木の茂り方が違って見える。」といったことがわかりやすく、かなり景観を意識し てつくられているのがわかる。したがって、札所正面から見える風景や札所への道を撮影してみると、 秩父らしさがよくわかる写真になるはずなので、特に注意して撮影する必要がある。
写真9枚を1組にして見せる意味も、ボリュームで訴えることができるので、9枚構成を多くつくっ ておく必要がある。この9枚構成することにより、ストーリーができ、9枚1組に構成できるように写 真をうまく撮り、そこから色をとり、色の良さを配色に置き直して活用したと発表することができる。

・科学的に分析するのではなく、統計から分析するのでもなく、自然摂理にしたがって同調させている。

・最近は「風土をそのまま保存していくものづくりをすべきだ」と言われているが、これにあわせて公共 物をつくれば、環境とうまくマッチングする。環境デザインの専門家によれば、これまで毎月定点観測 したものはなく、またその分析手法も確立されていないようである。現在は、風景の中に発電所・橋等 をつくる場合、1回だけ現場の写真を撮り、その写真の色と調和のとれる色で建設してしまっている。 しかしながら、都市計画、住宅、道路、橋、森林の保存、河川の形状の維持等、土木工事・建築に少し でもこの分析手法を用いた結果を利用すれば、説得力を持ち、環境に配慮した主張ができる。

10月定例研究会出席者(敬称略)
石塚工房 代表 石塚 賢一
級O井捺染 代表取締役 碓井 正男
且專熕D物 代表取締役 寺内 秀夫
ハシヅカ設計室 橋塚 晃司
華工房 主宰 木村 和恵
兜髄屋 代表取締役 関根 昭文

連絡事項

次回の定例研究会は11月28日(金)13:30〜16:00(開催日が変更になっています。)に行う予定になっていますのでスケジュールの調整をよろしくお願いします。なお、出欠席の確認は後日FAXでお送りする研究会の通知にて行います。ご不明の点やお気づきのことがございましたら、試験場(TEL 22-0134)の情報指導課 金子または井ヶ田(いげた)までご連絡ください。