使えない道具を作る 2005年度コンピュータ造形第6回課題


使えない鍵


表現理由

私は日常使っている道具の部品が、ほんの一部分でも欠けているだけで使えなくなってしまうということを表現したいと考えました。 そこで、毎日の生活の中で無くてはならない道具である「鍵」に焦点を当てることにしました。 もし鍵が使えなくなってしまったら、私達は家に入ることも、車を動かすことも、自転車に乗ることもできなくなってしまいます。 そのため、そのような鍵を作ってみることで、逆に鍵の形の重要性と必要性を認識することができると考えました。 私が作った鍵では、手で持つ部分がないため鍵穴に鍵を入れても回すことができません。 しかも一度鍵を入れてしまうと引き抜くこともできなくなってしまいます。 また、下図のような普通の鍵の場合、携帯するときにストラップなどを使い、鍵を無くさないような工夫をしていますが、 この鍵には紐を通す場所もないため携帯するのにも不便です。

力が入らないハサミ


表現理由

ハサミといっても普通のハサミではなく、画像にあるように柄の部分と刃の部分の動きが逆のハサミである。日常的に我々が使っているハサミは柄を開くと刃が開き、柄を閉じると刃も閉じる。そのほうが手に力が入りやすいからだ。しかし、その逆だったらどうだろうか。指の動く向きと刃が動く向きが逆なので操作しにくく、さらに柄に当たる部分が指の外側なので力を強く入れることもできない。

ちょこかご


表現理由

チョコレートでできた鳥(?)かご。 夏外に出すと溶ける他、 アリがたかるので要注意。

ダメポット


表現理由

本来の道具としての機能を放棄する駄目ぶりを表現しました。特徴は基本的にごく普通のポットですが、致命的にバランスが悪いところです。バランスを崩し、ポットの機能を丸ごと放棄する箇所は底の部分で、お湯などを入れると拒否するかの如く転げて捨ててしまいます。達磨と違って根性なしな部分も特徴だと思います(中はお湯などを入れるために重心を取るものを入れられないので達磨のように正位置で留まることができません。また、「縦方向(注ぎ口、取っ手方向)になら倒れないのでは?」とお考えになった場合、こういった形のものは必ず縦方向のみに倒れることはないので「使えない」ことは保証できるかと思います)。

2枚刃包丁

日常で使っている出刃包丁

作成した2枚刃出刃包丁

 

 


表現理由

「身近な日常の道具がこんな形だったら使いにくいかも・・・。」というのを考えていたら思いついたのが今回の作品。 かみそりでは3枚刃もあるくらいだが、もしも包丁の刃が1枚ではなかったら使えないであろう。みじん切りをするのには 使えるかもしれないが、用途があまりにもない。何かを切ってもとても細くなってしまうし切ったものが隙間に挟まって しまう。2枚刃包丁が売り出されることはないだろう。
 出来上がると単純明快な形であっけないものになってしまったのが残念。しかし作成段階では2本の刃の間隔を どのくらいで儲け作るのかや柄の部分をどのように連携させるかを試行錯誤しながら作成した。材質は、画像では 分かりにくいが、刃の部分を鉄のように見せるため反射光を高くしたり、光の拡散をあまりしないようにした。よく見る と刃の一部を押し出しによって作成したため若干曲がったりしてしまった。どのような道具を作るかを考える段階で 形に工夫があるものを考えればもっと見た目も楽しいものになったかもしれない。

回せない鍵


表現理由

上下に2つ並ぶ鍵穴に合わせて作られた、上下に2つ繋がった鍵。 2つの鍵穴に同時に鍵を差すことはできるが、その状態では鍵を回すことができない。 鍵を片方ずつ差すこともできないので、この鍵は鍵として使えない。 鍵は鍵穴に差した後、回すことで初めて機能するという点に着目して作った作品。

・ 短い柄の『トンカチ』,全面短い柄の『トンカチ』


表現理由

「使えない」道具をつくるという事で、まず色々と考えを巡らしてみた。一概に「使えない道具」といっても、どの程度まで日常の道具を改造していいのか迷った。今回題材に選んだトンカチであれば、例えば金属部分を柔らかい素材にするだけで「使えない」道具となるが、それは果たしてトンカチとは言えないものになってしまうだろう、と考えられた。そこで、道具本来の特徴をできる限り残すために、元々の構成部品や形状を極力変えないという方向性で、「使えない道具」をつくろうと取り組んだ。  その結果考え付いたのが、「短い柄の『トンカチ』」と、そのバージョンアップ版である「全面短い柄の『トンカチ』」である。  「短い柄の『トンカチ』」は、その名の通り手が持つ部分である柄が短いトンカチである。トンカチは、棒の先端に重い金属を付け、遠心力を利用して何かを力強く叩きつけるのに使う道具である。そのトンカチの遠心力を生むために、金属の重さだけでなく、柄の長さも重要になってくる。手に持っている部分と金属の距離が長ければ長いほどより強い遠心力を生むが、これが短いとほとんど力を発揮する事ができなくなってしまう。つまり、柄が短いと力強く叩く事ができなくなり、本来のトンカチの機能を果たす事が出来ず、結果として「使えない」道具となるのである。  しかし「短い柄の『トンカチ』」は、例えば弱い力でも硬く平らなもので叩く事ができるだけで十分な場面であれば使えないことも無い。そのため、正確には「ほとんど使えない道具」となってしまう。それを避けるために考えたのが、「全面短い柄の『トンカチ』」である。  「全面短い柄の『トンカチ』」は、金属の全ての面に短い柄を付けることによって、上からでも横からでも、どの方向からでも手に取る事ができるトンカチである。しかし、肝心の金属部分を叩きつける事ができないため、まさに「まったく使えない道具」であると言えよう。

フォーク


表現理由

持つ部分が短く、歯が全部別の方向向いている。また、歯一本一本がギザギザになっているため、使い方を誤ると口を切ってしまうような作り。 モデルにしっかりとしたスムースをかけないことで、逆にそのギザギザ感を強調した。

ドライバー


表現理由

+と−が両方についている。一見便利なようにも取れるが、扱う上では持ちにくくなる。更に、持つ部分はついていなく、細い鉄の部分だけしかない。 さらに、鉄の部分は素材がツルツル 滑るようなつくり。持ちにくく、滑るドライバーを表現した。そのために、テクスチャとライティングなどを工夫し、滑りやすい鉄を表現した。

無線マウス


表現理由

無線マウスというタイトルだが、最近よく見かける、電波を飛ばすタイプではなく、USB端子がマウスの先にくっついている。 パソコン本体に繋いだ場合、パソコンごと動かさないと使えない。
学生の感想
普段私は、Web系を専門としている。そのため、3DCGやCADといったソフトを扱うのは今回が初めてのことであった。そのため、普段目にするような綺麗なCGとはいかなかったが、それでも自分で納得するような作品としては仕上がった。畑違いだったため今までは扱う事は無かったが、今回CGを専門にする友人に操作方法を教わりながら制作した。始めて扱うのにMayaを選んだというのもあるのであろうが、やはり大変な作業であった。だが、その反面、元々モノづくりというのが好きなこともあってか、操作に慣れ要領をつかんでくるとだんだんと扱えるようにはなっていった。機会があればCG制作に関しても深く学んでみたい。 使いにくさとはなんだろうか、ということを考えるのは、簡単なようで大変なことであった。普段、「もっとこうなれば便利なのに」と考えるような事は多々あるので、その逆を考えればいいのだから簡単だと、課題に取り組む前には感じていた。しかし、いざ考えてみるとなかなかまとまらない。 そして、使いにくい道具を使いにくい道具として表現するのも大変だと言う事も分かった。私たちは、普段の生活の中でも多少使いにくい道具であっても使いこなしてしまうし、慣れてしまう。慣れというのは凄いもので、一旦慣れてしまえば、使いにくい道具であろうと、見なくても操作してしまうような事さえある。初心者の私にはMayaを使うのは大変だった、と上で述べたが、それは性能が良すぎるが故だとも言える。だが、逆にCGで生活をしているような人たちにしてみれば、あれくらいの機能が無ければ仕事にならないのであろう。慣れや習熟度、個人個人の感性といった、一概に測るのが難しい部分にまで繋がるということも知らされた。そういった部分を考慮して使いにくい道具を表現すると、かなり大げさな表現も必要だという考えも持った。 また、使いにくさというのにも様々な理由があるのだと改めて理解する事が出来た。大きさ、素材、形状、長さ、色、重さ、均整、バランス、習熟度などなど言葉を上げればきりが無い。また、私たちがこういった使いにくさを何とかしようとする考えで、現代にあるような道具に発展してきたともいえるが、それでも私たちは使いにくいと感じる道具はある。恐らく今後も発展していくのであろう。 使い方を考えずに使える道具、いわゆるアフォーダンスを取り入れた道具が使いやすい道具と言われている。今回のテーマを考える事で改めてその重要さを認識した。私がWeb系に関わっている事は冒頭で述べたが、その中にも取り込むことが出来る要素だからだ。ユーザインタフェース、ユーザビリティ、アクセシビリティといった要素まで意識しているので、こういった分野においても使いやすさというのは大きく関わってくる。今回改めて実感した事を、自分の専門としている分野でも重要な要素となるので、無駄にしないで生かしていきたい。