はじめに

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 大抵の人は、電卓(卓上電子計算器)の使い方を知っていると思います。実は、電卓はれっきとしたコンピュータです。余計なものが殆どついていませんので、電卓を使いこなして複雑な数値計算を進めるのは手間が掛かります。自分で計算をするのではなく、誰かに頼んで計算してもらうことを考えます。そのとき、計算の手順を説明する文書を作ることが、プログラミングに当たります。その誰かが、擬人化したコンピュータです。

 Plain_Basicは、非常に単純化されたBasic言語のインタプリタに著者が付けた名称です。コンパイラ形式の本格的なプログラミングツールではなくて、プログラミングの入門教育に使う教材として作成しました。Plain_Basicのモデルは、1980年代に爆発的に普及した8ビットのマイクロコンピュータ(8ビットマイコン:micorocomputer。my computerではありません)に組み込まれていたBasicインタプリタです。このBasic言語の仕様は、今は無くなりましたが「JIS基本BASIC(JIS C6207-1982)」にほぼ準拠しています。当時、多くの人は、8ビットマイコンを使ってプログラミングを覚え、これがその後のコンピュータ関係の教育に大きな励みになりました。現在のパーソナルコンピュータ(パソコン:personal computer、言わば独り占めで利用するコンピュータ)の環境では、このような単純なプログラミングツールを見なくなりましたので、プログラミング入門の教材として作成しました。

8ビットマイコンのBasic言語仕様は、その後に続いた16ビットパソコンに引継がれ、さらにVisual Basicに発展して、初期の単純さが全く無くなってしまいました。言語構造としては、大型コンピュータで利用するコンパイラ形式のFortranに較べて、能力が足りない不満がありましたが、ユーザインタフェースの機能には学ぶべきことが多くありました。そこで、著者は、1980年代の後半に大型コンピュータの環境で、マイコンBasic並のインタフェースを持つインタプリタツールを、Fortran言語を使って開発し、これをNUCE_BASICと名付けました。このツールは、Fortranで書かれた多くのサブルーチンを、ユーザがマイコンBasic言語の特殊コマンドのような感覚で利用することが目的でした。特に、幾何モデリングのツールGEOMAPを組み込んだバージョンは、教育利用として好評でした。

Plain_Basicは、Fortran版のNUCE_BASICを、C/C++言語を使って書き直したものです。開発ツールにはBorland C++Builderを使いました。パソコンのOS環境が32ビットのWindows系が主流になりましたので、この環境で、昔の8ビットマイコンのインタフェース環境を再現するように開発しました。Plain_Basicは、初心者のプログラミング教育に利用しますが、C/C++で作製した本体のソースコードは、やや高度なプログラミング教育に利用することを考え、そのソースコードも公開することにしました。また、このPlain_Basicをプロトタイプとして幾つかのインタプリタを開発しました。主要なものは、幾何計算用のツールGeometry_Basic、幾何モデリングツールを組み込んだGEOMAP_Basicがあります。これらのマニュアルは別にまとめました。
2006年5月01日版:島田 静雄


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