3.8 基本的な図形要素としての円と矩形

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 初等幾何学では、図形を定規とコンパスとを使って作図することが基本ですので、円と円、円と直線、直線と直線、それぞれ交点を求めることが頻繁に行われます。すなわち、実践的な図形作図の段階では、基本の幾何学的要素に円を入れておかないと話になりません。

 G-BASICでは、2次元の幾何学要素の型に円を含めてあります。円は、中心の座標と半径とを表すように、三つの実数(x,y,r)を一組にして円のデータ型を定めました。このように決めることで、上に述べた交点の計算を簡単な代数式で求めることができます。さらに、半径rに符号を持たせて、その円が左回りか(+)、右回りか(−)かを区別するようにしました。この約束は、離して描かれた二つの円の共通接線を求めるときに効果を発揮します。共通接線は図的には4本あります。接線に向きを考えると8種類に区別できます。いま、二つの円を一方通行の自動車道路と仮定し、一方の円から他方の円へ移る接線道路を引くことを考えます。すると、円を回る向きを決めることで接線が一意に決まるのです。

 円の型は幾何学的要素として重要なので決めましたが、矩形の型は作図の補助要素として利用度が高いことを考えに入れて決めました。データの型は、矩形の中心座標と、横と縦の幅(2a×2b)を与えるように四つの実数の組み(x,y,a,b)で定義します。ここでは、縦横の寸法に負の符号を利用する用途がありませんので負の寸法は定義しませんでした。

 立体幾何学を解析する場合、平面幾何学での円ほどには球は使いこなされていません。むしろ、直方体の方が直接・間接によく利用されます。例えば、ある立体的な幾何モデルを考えたとき、それを包み込む直方体の寸法を求めておいて、二つの幾何モデルの干渉の可能性の有無を、二つの直方体の干渉で行います。また、このモデルの投影図を適度な寸法で画面に作図させたいとき、まず幾何モデルを包む直方体の寸法を求め、さらにこれに外接する球を求め、この球の投影である円が画面いっぱいに接するように投影を計画すれば、投影図形が部分的に欠ける心配がありません。G-BASICでは、このような可能性も考えて、球と直方体とのデータ型を定義しました(表3.1参照)。

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