第7章 図形の幾何定数の計算

7.1 概説

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 図形の性質を表す数学量には幾つかの種類があります。最も基礎的な量が寸法、つまり長さです。長さを表す用語は、縦・横・高さ・幅・奥行き・深さ・距離・直径・半径などがごく普通に使い分けられています。これらの用語は真直ぐな直線を引いて測った長さを意味して使われます。しかし、曲線や多角形に沿って測る長さも必要です。角度も長さに直した量で扱います。角度のラジアンは、単位の円周に沿って測った長さで表した量です。技術の社会では、傾斜を表すとき、奥行きに対する高さの比で表示する習慣になっていて、3割の勾配、などと言います。

 長さを測るには、単位の長さを決めて、それと比較する測定技術が必要です。単位の決め方は人類の歴史のなかで様々な変遷をしてきました。これはこれで多くの物語りがあります。物指しを当てて直接に寸法が測れないときに、幾何の原理を応用して間接的に寸法を計算します。現代の工業製図においても、対象物の寸法記入の原則は、物指しを使って測れないような寸法を書いてはいけないことになっています。例えば、円柱の寸法を記入するとき、半径ではなく、直径を記入するのです。幾何学は、寸法が直接に測定できない長さの計算原理を扱う学問ということもできます。幾何の英語名のgeo-metryは、語の成り立ちから言えば、ピラミッドを建設するときに必要であったような測地学、または測量学を意味しているのです。

 平面図形の面積と立体図形の体積とは、図形の寸法についで良く利用される数値です。しかし、これらの数値は、長さをもとに計算して求めなければなりません。その基礎的な方法が、初等幾何で教えている単純な図形の面積や体積計算の公式です。地図などのように、ちょっと複雑な平面図形の面積を求めるとなると、実際計算はかなり面倒なものです。紙に描いた図形の面積測定器にプラニメータという機械があって、測量会社で使っています。複雑な立体モデルの体積計算となると、通常では手にあまります。体積を直接に測定するには、アルキメデスの原理が使われます。また、面積を求めたいとき、均質な紙を使って図形を切り出し、これを精密天秤で測定する方法もあります。面積や体積の数値は、工業材料の重量や価格の積算などをするときに必要になります。

 工業製品の設計においては、寸法を基礎数値として、さらに高度な数値の計算が必要になります。それは重心位置・一次モーメント(一次能率:static moment)・二次モーメント(慣性モーメントまたは慣性能率:inertial moment)・主軸などです。これらの数値を手で計算しなければならなかった時代には、図形モデルそのものを、計算しやすいように単純化する妥協も行なわれました。コンピュータが利用できるようになっても、手計算の方法でプログラムするのが普通でした。しかし、複雑な図形についてコンピュータを利用するとなると、手で計算をする方法とは違ったアルゴリズムを考えた方が良い場合があります。その代表的な方法が有限要素法(FEM: Finite Element Method)です。

 FEMでは、平面図形を三角形の集合で表します。立体図形では三角形を面要素とした四面体の集合で考えます。どのような切り分けをするのが良いか、また、その切り分けをどう利用するか、計算理論をどう組み立てるか、そして数値計算をどう計画するか、などがFEMに関連して研究されています。その実際的な計算においては、大部分が幾何に関するものです。さらに、要素としての三角形を表すとき、頂点の番号の付け方、三角形要素の番号の付け方などは、コンピュータのメモリ領域の使い方と関連するトポロジーです。この章では、三角形と四面体とについて、コンピュータの利用に適するように、図形の幾何学的定数を求める方法を解説しました。

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