5. グラフィックスのプログラミング

5.1 グラフィックス技術の歴史概説

5.1.1 製図の自動化に始まったこと

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 科学技術の分野では、コンピュータを利用して図を描かせたいという要望は、数値計算を高速で処理したいと言う要望と表裏一体の関係にあります。数学では、グラフを描いて事象の性質を理解することは普通の方法です。科学的な測定には、線図で記録するレコーダが多く使われます。工業技術の分野では、大寸法の製図に応用する自動製図が研究されました。中でも、地図の作成に応用するときには作図精度を上げることに大きな努力がされました。これがCADのソフトウェアの源流です。CADは、二つの意義があります。一つはComputer Aided Designであってコンピュータ支援設計と訳しています。もう一つがComputer Aided Draftingであって、これに自動製図を当てます。自動製図を実現するには、コンピュータの計算結果を線図で描かせる大型作図装置の開発と、それを制御するプログラミングが必要でした。これは作図装置に依存しますので、今でいうオブジェクト指向プログラミングです。自動製図は、原理的にはペンを移動させて線図で図形を描かせます。ペンに代えて工作機械の工具を使うことはCADと同質の開発になりますのでCAM(computer aided manufacturing)と言い、コンピュータ支援製作と当てます。この両方は相互に関係が深いので、CAD/CAMとして一つの専門扱いをします。図を描かせることに限ると、濃淡図や、カラーを使う作図は、当初、装置の製作が難しかったことも一つの原因でしたので、テレビのようなグラフィックス装置を使って観察(モニタ)する使い方が主流でした。これが、コンピュータゲームに応用され、結果的にグラフィックス技術の発展に大きく寄与しました。印刷に使うプリンタは、作図装置とは関係が薄いと思われていましたが、ドットインパクトプリンタ・レーザプリンタ・インクジェットプリンタが開発されて、印刷装置と作図装置の区別が無くなりました。そして、グラフィックスの利用は、科学技術の利用だけでなく、一般の事務処理計算にも応用されるようになり、通称でbusiness graphという分野に育ちました。Microsoft Excelに組み込まれているグラフウイザードがその例です。


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